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発熱とは

発熱は、体が病原体(ウイルスや細菌など)や異物に対して、防御反応を示すために起こる生理的な現象です。発熱には重要な役割があり、免疫を活性化して体温を高め、免疫細胞(特に白血球)の働きを活発化させたり、また、多くの病原体は高温環境での増殖が抑えられるため、病気の進行を防ぐ助けにもなります。
体温を上げるための体の反応
・寒気や震え:筋肉の収縮で熱を生産します。
・血管の収縮:皮膚表面の血流を減らし、熱の放散を抑えます。
・基礎代謝の増加:体内での化学反応を加速させ、熱を発生します。
発熱を伴う急性疾患
発熱を伴う急性疾患は多岐に渡りますが、その多くは感染症が主な原因となります。
ウイルス感染症
・上気道症状(のど、咳、鼻水)を一様にまんべんなく発症したものを一般的に風邪症状と言われるものです。また、全身症状(悪寒、倦怠感、筋肉痛、関節痛、食指不振)を伴うものはインフルエンザウイルスやコロナウイルスなどが原因となることが多く知られていますが、その限りではありません。中には扁桃炎や副鼻腔炎単独で生じるケースもあります。
・下気道症状は気管支炎、肺炎などの分類とされますが、ウイルスが関与するケースも少なくありません。上記の上気道症状と同等のウイルスに追随することが多いですが免疫不全患者などでは直接的に肺に感染するウイルスも存在します。(サイトメガロウイルスなど)
・腸炎もウイルスが関与することは多く、代表的なウイルスはノロウイルスやロタウイルスが挙がります。発熱を伴うことがあります。
・渡航者感染:海外に滞在された際に感染するもので、主に蚊やマダニ、動物などに噛まれることで感染につながるケースが多いです。渡航先の感染状況を確認し感染経路を予防することが推奨されます。その情報については厚生労働省が出しているHPを参照いただくとわかりやすいと考えられます。
・その他、皮疹(単純ヘルペスや帯状疱疹など)や頭痛(脳炎、髄膜炎など)、肝炎(各種肝炎ウイルス)なども熱源となることがあります。
風邪
細菌感染症
・扁桃腺炎:喉の痛み、前頚部リンパ節の疼痛を伴う腫脹が一般的でその他の症状はほとんど見られないのが特徴です。原因菌はA群β溶連菌感染が最多。
・気管支炎・肺炎:咳・痰・呼吸苦などが症状主体となります。原因としては若年者であればマイコプラズマ、高齢者であれば肺炎球菌が多く、活動性が低下した高齢者は誤嚥性肺炎なども考えられます。
・尿路感染症:膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎が上がりますが、膀胱炎単独では通常発熱は伴いません。腎盂腎炎は重症化し敗血症に陥りやすいので注意が必要です。
・感染性腸炎:俗にいう食中毒が最多であり、手を介してヒトからヒトへ感染しやすいのも特徴です。症状としては発熱以外に嘔吐、腹痛、下痢などが認められます。症状が強く出ると血便なども伴う事もあります。原因菌としてサルモネラ菌やカンピロバクターなどが多いですが、腸管出血性大腸菌(O-157)など毒性が強い細菌などもあり注意が必要となるケースもあります。
・胆嚢炎:心窩部の違和感や痛みを伴うケースが多いです。主に常在する腸内細菌が影響することが多いです。胆嚢内の胆汁排泄障害が原因となることが多いと考えられておりますが原因不明であることもあります。
・虫垂炎:俗にいう盲腸に糞便が貯まり腸内細菌がそこで繁殖することで感染が起きることがあります。現在のガイドラインではすぐに手術という傾向ではなくなっておりますが、盲腸の出入り口が糞石という邪魔者で閉塞や狭窄してしまっている状態であるもしくは盲腸が破裂しているような状態では手術の選択となることもあります。
その他の感染症
・上記以外には真菌感染(俗にいうカビ)、結核、寄生虫などがあります。
非感染性炎症性疾患(感染症が原因とならない急性炎症性疾患)
炎症性疾患
感染症以外の炎症が原因となる場合があります。
・急性虫垂炎:炎症が進行して腹膜炎になると発熱を伴います。
・膵炎:急性膵炎は上腹部の痛みとともに発熱を引き起こします。
・急性胆嚢炎:胆石が詰まり、胆嚢に炎症が起こる。
中毒性疾患
毒素や薬物が原因となる場合。
・薬剤熱:特定の薬に対するアレルギー反応。
・食中毒:腸炎ビブリオ、カンピロバクターなどの感染が多い。
外傷や手術後
・術後感染:手術部位が感染することで発熱。
・熱傷(やけど):広範囲のやけどは発熱を伴う。
その他の原因
・熱中症:環境要因で急激に体温が上がる。
・急性白血病:骨髄機能の異常で感染症が引き起こされやすい。
特に注意が必要な症状
以下の場合は緊急性が高い場合があります。
・高熱が続く(39℃以上が数日以上)。
・意識障害やけいれん。
・頻回の嘔吐や激しい腹痛。
・発疹や紫斑がある(感染症による血液の異常が疑われる)。
発熱を伴う慢性疾患
発熱を伴う慢性疾患は、炎症性、感染症性、自己免疫性、腫瘍性など多岐にわたります。
感染症
・結核:結核菌による感染が原因で、長期間続く微熱と、咳、痰、体重減少がみられます。
・慢性骨髄炎:細菌や真菌の感染が原因で、骨や関節に慢性的な感染が生じます。
・感染性心内膜炎:心臓の内膜に細菌が感染し、長期間の発熱や疲労感を引き起こします。
・HIV / AIDS:ヒト免疫不全ウイルスの感染が原因。慢性的な発熱、体重減少、リンパ節の腫れが現れます。
・慢性肝炎:B型・C型肝炎ウイルス感染による持続的な肝炎。
自己免疫疾患
・膠原病:関節リウマチに代表される自己免疫反応による慢性的な炎症が特徴です。原因不明の発熱にて各症状に合わせて採血による自己抗体検査などを測定し診断していきます。
・炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎、クローン病等が挙げられ、腸の炎症による微熱、腹痛、下痢を起こします。
病気の検査方法
上記の通り、発熱が起こる病気は多岐にわたるため、検査方法は様々ですが、一般的にはまず、病歴等をお伺いするなど詳しく診察をした上で、下記の検査方法が挙げられます。
血液検査
血液を採取して体内の炎症反応や感染症の有無を調べます。
尿検査
尿から感染やその他の異常を確認していきます。
画像検査
胸部X線や腹部エコー等の画像診断で、臓器や組織の異常を調べていきます。
病気の治療法
ウイルス感染症が原因の場合
風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス等のウイルス感染症の場合、治療方法は以下となります。
・対症療法: 解熱薬(アセトアミノフェン)や鎮痛薬で症状を緩和。
・水分補給: 脱水を防ぐため十分な水分を摂取。
・休養: 免疫力を高めるために体を休める。
・抗ウイルス薬(必要時): インフルエンザ:オセルタミビル(タミフル)やザナミビル。
・ウイルス感染症:抗生剤は不要であり、細菌感染を予防できるといったエビデンスもほとんどないです。むしろ薬を多数飲むことによる副作用を起こす確率の方が高く、また、無駄な抗生剤服用は耐性菌を育てるだけのものと考えられており、デメリットの方が多いものになります。必要な時に適切な薬剤選択をすることが重要であります。
細菌感染症の場合
扁桃炎、肺炎、尿路感染症等の細菌感染症の場合、治療方法は以下となります。
抗生物質: 感染の原因菌に適した抗菌薬を使用します。
扁桃炎:ペニシリン系やマクロライド系抗菌薬。
肺炎:アモキシシリンやレボフロキサシン。
尿路感染症:ニューキノロン系抗菌薬やホスホマイシン。
胃腸炎:当院では細菌性を疑われる場合でもまずは対症療法にて経過を見ます。最近の見解では腸炎に対し抗菌薬処方はむしろ病悩期間が延長するというデータさえも出ており、投与時期については経過を見て判断させていただいております。
発熱に関するご相談

発熱自体は防御反応の一部であり、病気の原因を特定する手がかりになりますが、発熱が長引く場合や高熱が続く場合は、医療機関での診察が必要です。また、適切な治療のためには、医療機関での診察と検査が欠かせません。
急性、慢性に関わらず、少しでも発熱がある場合は、京都市右京の清水医院まで、まずは受診にお越しください。
なお当院での発熱診療は発熱外来という枠でのみ行っており、完全予約制となっております。適応患者は発熱のある患者並びに1週間以内発症の咽頭痛、咳・痰・鼻汁が含まれております。発熱がない患者であっても発熱外来の受診が必要となり、一般外来の予約でお取りいただいても発熱外来枠での予約の取り直しとなりますのでご留意ください。なお、万が一予約が埋まっている場合であれば受付時間内にご連絡いただければ調整を行います。